はじめに~私の経験から~
不眠でお悩みのみなさんへ
夜、眠れないのはとてもつらいですよね。
私自身も不眠症でした。
不眠の悩みについては、よくわかります。
「眠りたいのに眠れない」
「起きたくないのに起きてしまう」
「仕事があるのに…」
「重い病気?もしかして脳の病気?うつ病?」
さらに、
眠れていないので集中力や仕事の質が落ちました。
むしょうにイライラしました。
ご飯もおいしくありませんでした。
私の場合、原因は過労とストレスでした。
ですが、どうすれば不眠が良くなるのか、だれも教えてくれませんでした。
テレビやインターネットなどでは、不眠や睡眠に関する商品、情報があふれています。私も手あたりしだい試しました。
このページは治療ガイドラインや科学的エビデンスを重視して書いてあります。
さあ前置きはこのくらいにして、不眠について一緒に学びましょう!!
学べば、ご自身の不眠の原因、ご自身に合った不眠の治し方が分かります!!
このページを読み進めてもOKですし、ほぼ同じ内容の動画も公開しています。
また、お時間のある方は私の「自己紹介」もご覧ください!
動画はコチラから
不眠についての基礎知識を解説した動画です。
睡眠に関する注意したい病気、不眠のメカニズム、治療法についてお話しています。
長いのでお時間があるときにどうぞ。
不眠とは…?
不眠の定義
ご自身や家族、身の回りの方が不眠症かどうか、心配ですよね。
もちろん、不眠症かどうかの診断はお医者さんにしかできません。
ですが、ひとりの責任ある”患者”あるいは”支援者”として知識を身につけるのは大変良いことです。
まずは不眠症の定義を見ていきましょう。
厚生労働省のホームページから引用します。
不眠症とは、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害などの睡眠問題が1ヶ月以上続き、日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下などの不調が出現する病気です。
(厚生労働省「e-ヘルスネット」より引用)
不眠の原因はストレス・こころやからだの病気・クスリの副作用などさまざまで、原因に応じた対処が必要です。不眠が続くと不眠恐怖が生じ、緊張や睡眠状態へのこだわりのために、なおさら不眠が悪化するという悪循環に陥ります。
家庭での不眠対処で効果が出ないときは専門医に相談しましょう。睡眠薬に対する過度の心配はいりません。現在使われている睡眠薬は適切に使用すれば安全です。
このようになっています。順番に解説していきます。
入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害とは
入眠困難とは「寝つきが悪いこと」
中途覚醒とは「寝ている途中で眼が覚めること」
早朝覚醒とは「早く眼が覚めてしまうこと」
熟眠困難とは起きた時に「寝たりない」「寝た気がしない」などのぐっすり眠れていない感覚のことです。
下の図をご覧ください。
不眠症は、ただ眠れないというだけではありません。
「日中(活動)の症状」と「夜間(睡眠)の症状」が両方あってはじめて不眠症です。
ですので、「ちょっと眠りが浅い感じがあるけど、日中の仕事は全然問題ない」という方はそこまで心配する必要はないでしょう。
日中の症状は図にあるもののほかに、イライラする、めまい、吐き気、胃酸が上がってくる、考えがまとまらないなどなど様々です。「自律神経症状」は汗や血管、内臓の症状です。たとえば、汗が止まらない、手足が冷える、冷え症、便秘や下利、動悸や息切れ、呼吸が浅い感じ、頭痛、のぼせなどです。いわゆる不定愁訴です。
要するに、「日中、調子が悪い」+「夜、ぐっすり眠れない」ときに不眠症に当てはまります。
不眠の原因
つぎに、不眠の原因をみていきましょう。
先ほど引用した厚生労働省の文書にもありましたが、不眠の原因は大きく分けて5つあります。
不眠の原因を明らかにすることこそ、不眠治療の第一歩です!
原因を明らかにせずに睡眠薬や快眠ドリンクを飲んでも良くならないでしょう。
もしかすると、あなたの問題を悪化させることになるかもしれません。
あなたやあなたの大切な人の不眠の原因は、いったい何でしょうか?
いっしょに考えていきましょう。
①不眠症以外の病気や怪我の場合
不眠症以外に病気や怪我がある場合は、そちらの治療を優先しましょう。
例えば、夜間の喘息(呼吸が苦しくて眠れない)、五十肩(痛みで眠れない)などです。
症状によっては鍼灸の単独治療で効果が期待できますが、まずはお医者さんに行くことをおすすめします。
②薬を服用している場合
薬の副作用や飲み合わせによって不眠が起こっている場合です。
お医者さんや薬剤師さんに相談しましょう。
その時、病院の薬だけではなく、市販の薬やサプリメント、健康食品なども併せて相談するとよいです。
③ストレスや緊張、不安や悩みがある場合(急性パターン)
ストレスや緊張があると誰でも眠れなくなります。
できることなら、普段から疲れやストレスをため込まないように日ごろからストレス発散をしましょう。
ですが「仕事や勉強が忙しい」「緊張の連続でストレス発散が追いつかない」「休んでも緊張のスイッチが切れない」という方もたくさんおられます。
そんな方たちに、鍼灸が有効です。鍼灸治療で身体に起こるストレス反応を軽減することが論文で発表されています。つまり、鍼灸の治療もストレス解消に効果があるのです。詳しくはコチラをご覧ください。
また不安や悩みがあるときは誰かに話をしてみましょう。
ひとりで抱えるより、誰かに話した方が楽になりますよ。
公共の無料電話相談を利用するのも良いでしょう。
また、私はメンタルケア心理士の資格を持っていますので、私に悩みや困りごとを話していただいても結構です。
とはいえ、だれしも他人に明かせない悩みや秘密はありますよね。
そんなときは、「B.不安、悩み、メンタルの不調に」を参考にしてみてはいかがでしょうか。ひとりでできるセルフカウンセリングを紹介しています。
④不眠が悪循環になっている場合(慢性・悪循環パターン)
「寝よう!」とすればするほど、かえって眠れない…
そんな経験は誰しも一度や二度はあるでしょう。この状態が悪循環に陥るととてもやっかいです。
このパターンは大きく分けてふたつあります。
ひとつは、「ストレスで眠れない」状態から「ストレスはないのに(感じていないのに)眠れない」に移行してしまった不眠です。いわば、急性のストレスから不眠の悪循環に陥り、急性のストレスがなくなっても悪循環から抜け出せない事態です。
たとえば、「仕事を休んでストレスから解放されたはずなのに、全然眠れるようにならない」場合です。私がまさにそうでした。
もうひとつは、夜更かし習慣が染みついてしまって、早く寝たくても眠れなくなるというパターンです。
たとえば、ゴールデンウイークや夏休み、正月休み明けです。急に休み明けから規則正しく、早く眠ろうとしてもなかなかもどりませんよね。
どちらも「寝よう、寝よう」という意気込みがストレスになってしまっています。ストレスを感じると人は興奮します。興奮すると、眠れません・・・。
いずれのパターンでも治療法「A.生活習慣の見直し・改善」が重要です。必須といえます。それでも治らない場合は「C.不眠が習慣化・慢性化している方へ「睡眠日誌」」にステップアップしましょう。
これらと並行して、鍼灸や操体法による治療もおすすめします。これらの治療は身体を緊張からリラックス状態にすることができるので、慢性の不眠についても効果が期待できます。
⑤加齢・老化
年をとると、朝早く目が覚めやすくなります。これ自体は自然なことです。
日中の活動も若いころに比べると穏やかになりますので、睡眠も少なくて済むようになります。
個人差もありますので、他人と比べないことです。
日中、困った症状がなければ睡眠は十分であると考えましょう。
ただし、知らず知らずのうちに不眠になりやすい習慣を送っている場合がありますので、④と同じように生活を改善することで年相応の睡眠は得られるでしょう。
不眠の治し方
これまでに不眠の原因を解説してきました。
あなたの、あなたの大切な人の不眠はどの原因に当てはまるでしょうか。
もうお気づきでしょう。
くりかえしになりますが、不眠症は「睡眠薬や快眠ドリンクを飲めば万事解決!」という病気ではありませんね。
「不眠の原因」でみたとおり、原因によって解決のアプローチが変わります。
生活習慣、ストレスや悩みなど心当たりのある項目をご覧ください。
自分でできる不眠の治し方
A.生活習慣の見直し・改善
「継続は力なり」「チリも積もれば山となる」…
生活習慣はとても重要です。
生活習慣の見直しや改善を抜きにして、不眠の治療はありえません。
すべてをパーフェクトに守る必要はありません。
できそうなものから、少しずつ変えていきましょう。
下の動画では一部内容が異なりますが、内容はほとんど同じものです。
理由まで詳しく解説していますので、お時間のある方はぜひご覧ください!!
B.不安、悩み、メンタルの不調に
不安や悩みは、ひとりで抱えないようにしましょう。
信頼できる家族、友人、医師やカウンセラー、相談窓口など。
誰でも構いません、おしゃべりしてみましょう。
しかし、他人に相談しにくい悩みや、相談できる人が近くにいないこともありますよね。
そんな時は、紙に書いてみましょう。日記でもいいですし、メモでもいいです。とりあえず、なんでもいいのです。頭に浮かぶことを、ただひたすら書いてみましょう。
書くことで考えが整理され、不安のボリュームが減るはずです。
いくつか方法があります。詳しくは以下の動画をご覧ください。
資料のダウンロード
動画で使用している資料・ワークシートは以下からダウンロードできます。
C.不眠が習慣化・慢性化している方へ「睡眠日誌」
「ストレスや悩みは思い当たらない…」
「今は夜更かししてないのに…」など
睡眠の記録をつけるだけでも改善するかもしれません。
「A.生活習慣の見直し・改善」と並行して実践しましょう。
睡眠制限は自分ひとりでもできますが、身体への負荷が大きい治療法です。できれば周りの協力が得られるときに行うのが望ましいです。
当院では睡眠制限療法をサポートするプログラムがあります。こちらをご覧ください。
資料のダウンロードはコチラです
睡眠薬について
厚生労働省は「睡眠薬は適切に使用すれば安全」としています。これはごもっともです。
ですが、裏を返せば「睡眠薬は適切に使用しなければ危険」なのです。
自己判断で飲んだり、止めたり、量を変更してはいけません。
必ずお医者さんや薬剤師さんの指導の下、服薬しましょう。
いくつか、睡眠薬の注意事項を上げます。参考にしてください。
①生活習慣の乱れ、ストレス、悩みがある場合はその問題解決が最優先です。
原因を放置したまま睡眠薬を飲んでも何も解決しません。睡眠薬を飲むのはそれからでも遅くはないでしょう。
②高齢者は十分注意しましょう。
睡眠薬が効いて頭がボーっとし転倒のリスクが上がります。転倒による怪我から寝たきりになるとたいへんです。車の運転など危険を伴う行動も控えましょう。
③睡眠薬をやめる時は医師の指導の下で徐々に量を減らします。
自己判断でいきなり止めてはいけません。大変危険です。いきなりやめてしまうと、不眠が悪化する可能性があります。
④他の薬と同様ですが、睡眠薬を家族や知人と共有してはいけません。
③のように医師のコントロールのもとで飲む薬だからです。
当院での治療・プログラムのご提案
さて、これまで不眠の定義、原因、自分でできる治し方を紹介してきました。
ここからは当院の不眠治療をご説明いたします!
通常治療(科学的なエビデンスをご紹介)
不眠の日中症状(イライラ、頭痛、めまい、吐き気、冷え症、便秘や下利、動悸や息切れ、呼吸が浅い感じ)などのいわゆる不定愁訴は鍼灸や操体法の得意分野です!
不眠の夜間症状、その原因のうち「③ストレスや緊張、不安や悩みがある場合(急性)」についても鍼灸や操体法で治療効果が見込めます。
とくに鍼灸については、ここ数年で多くの研究結果が発表されています。いくつか以下に紹介します。
鍼治療は,不安障害,抑うつ,双極性障害,睡眠障害などの精神的要因の関連する症状にも適応されている.(中略)円皮鍼はオレキシンの分泌抑制を介して,ストレス反応を抑制したと考えられる.
「鍼治療がストレス反応に及ぼす影響 —円皮鍼の基礎研究より—」(砂川ら,2019)
鍼灸治療を受療する患者の多くが不眠症状を訴えている。 彼らの多くは夜間の覚醒回数が治療後に減少したと報告する。(中略)我々は就寝前に四肢に行う灸治療を継続的に行うことで、夜間の覚醒回数を減少させることを報告している。このように不眠症状に有用とされる伝統的な経穴や科学的検証に基づいて有用とされる経穴が存在し、これらを利用することは健康の維持に有用であると考える。
「不眠症状と鍼灸治療」(鍋田,2022)
不眠症を訴える女性患者 59 名(平均年齢 43.5±7.4 歳)に(中略)治療を 1 カ月で平均 4.1 回行った.その結果,AIS 8 項目の各得点および合計点数に有意な改善がみられた.以上から,鍼灸治療は女性の不眠症を改善させることが示唆された.
「女性の不眠症に対する鍼灸治療の効果」(中村ら,2018)
引用もとの論文はタイトルをクリックするとみられます。(引用文中の強調は鈴木によるもの)
当院での鍼灸治療については他にコチラをご覧ください。
また、操体法についてはコチラをどうぞ。
睡眠制限療法サポートプログラム(ガイドライン掲載)
不眠の夜間症状、その原因のうち「④不眠が習慣となっている場合(慢性)」に有効な治療法が睡眠制限療法です。
睡眠時間を記録し、コントロールすることで熟眠感を得やすくなります。
当院では睡眠制限療法と鍼灸・操体の治療を組み合わせて行います。
詳しくはコチラをご覧ください。
さいごに
まとめ
さいごまでお読みいただきありがとうございました。
長かったですね!
不眠について理解が深まれば、不眠が良くなる方向に一歩近づいたのです!!
すこしの不眠であれば、自然に、ひとりでに治るでしょう。
ですが、しぶとい不眠は一筋縄ではいきませんよね。
私どもがあなたやあなたの大切な方のお役に立てることを願っています。
ご予約はこちらから
当院で不眠治療を受けたいという方はもちろん!
相談してみたいという方も、初回の相談までは無料です。(治療は有料です。)
お気軽にお問い合わせください。
不眠 Q&A
これまでに書き切れなかかった情報をQ&Aにまとめました。
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布団に入ると、足がムズムズして眠れない。これって不眠症ですか?
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「むずむず脚症候群」という病気の可能性があります。この病気は不眠症ではありません。
お薬での治療が有効ですので、かかりつけの病院か、内科、心療内科を受診してください。ちなみに、ムズムズは個人によって感覚が違うようです。「足の違和感」と広く考えたほうが良いでしょう。
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不眠や睡眠の本がたくさん出ていますが、どれを読めばいいですか?
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『睡眠障害の対応と治療ガイドライン 第3版』(じほう,2019)が一番おすすめです。
一般向けではないので通読するのは少し難しいかもしれませんが、
気になるところ、自分が当てはまりそうなところだけ読むのでも良いでしょう。
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睡眠時間はどれくらいが正常ですか?
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目安は6時間以上で8時間を大きく超えない程度です。
あくまで目安です。個人差もありますし、同じ人でも年齢や季節によって変化します。日中、眠気で困ることがなければ睡眠時間は足りていると思って大丈夫です。
(コーヒーやエナジードリンクなどのカフェインを飲まないと眠い、という人は睡眠時間が足りていないかもしれません。)
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眠らないとどうなりますか?
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免疫機能の低下、肥満や糖尿病のリスク上昇、認知症のリスク上昇が言われています。
また、子供の場合は成長ホルモンの関係から発育不全のリスクが上がります。
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昼夜逆転の生活になってしまって・・・
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まずは生活習慣の改善です。つらいとは思いますが、お手伝いしますので一緒に頑張りましょう。
ただし、非常に珍しい病気で睡眠のサイクルが狂ってしまう病気があります(睡眠相後退(前進)症候群など)。頑張っても良くならない、なにか変だな?と思うときはお医者さん(精神科・心療内科)に掛かりましょう。
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どれくらいの期間、治療が必要ですか?
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既に病院にかかっていて睡眠薬を処方されている場合は、病院での治療終了まで当院での治療を継続することをおすすめします。これは睡眠薬の特性のためです。
まだ病院にかかっていない、自分でなんとか不眠を治したいという方は治療法や治療ペースにもよりますが、少なくとも二ヶ月くらいでしょう。
治療のペースについては、状況によりますが、だいたい一週間に一回、二週間に一回くらいをおすすめします。